初日の出に学ぶ「儀式」の力──行動変容をデザインするという発想

元旦の早朝、いつものランニングコースで目にした光景。普段は誰もいない橋の上に、寒空の下で日の出を待つ人だかりがあった。なぜ人は「儀式」のためなら、普段は絶対にとらない行動をとれるのか。そこにはビジネスにも日常にも応用できる、大きなヒントがあるかもしれません。

初日の出に学ぶ「儀式」の力──行動変容をデザインするという発想

元旦の早朝、いつものランニングコースで目にした光景。普段は誰もいない橋の上に、寒空の下で日の出を待つ人だかりがあった。なぜ人は「儀式」のためなら、普段は絶対にとらない行動をとれるのか。そこにはビジネスにも日常にも応用できる、大きなヒントがあるかもしれません。

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元旦の朝、いつもと違う景色

僕は毎朝5時55分に起きて、外を2〜3キロほど走るようにしています。

とはいえ、正直なところ寝坊してしまうことも多くて、まだ完全には習慣化できていません。

それでもある程度の頻度で走っているので、普段のルートの様子はだいたい把握しています。

走り始めがだいたい6時20分頃なので、車通りはほとんどないし、人が歩いている姿もめったに見かけません。

たまに犬の散歩をしているご年配の方とすれ違うくらい。

でも元旦の朝は、ちょっと様子が違いました。

いつも走っているルートに川があって、その川を渡る橋は見晴らしがよく、遠くの空まで綺麗に見えるんですね。

その橋の上に、ちらほらと人だかりができていたんです。

彼らは初日の出を待っている人たちでした。

「普段は絶対にいない人たち」がそこにいた

僕はその人だかりを横目に走り去っていったんですが、あとで考えるとこれって面白いことだなと思ったんです。

僕は普段からその時間に走っているからわかるんですけど、そこにいた人たちは普段のこの時間にはいないんですよね。

冬の朝でとても寒いし、元旦じゃなかったらおそらく起きてすらいない。

高確率で外には出ていないはずなんです。

でも1月1日というその日だけは、朝6時台に起きて、気温マイナス1度くらいの寒さの中、外に出て、橋の上で太陽が昇るのを待っている。

つまりこの人たちは、「初日の出を見る」という儀式に参加するために、普段は絶対にとらない行動をとったということなんです。

儀式が持つ「行動変容」の力

僕自身、結構だらけがちなタイプなので、自分の行動を変えることがどれくらい難しいかは痛感しています。

ましてや他人の行動を変えるなんて、その何十倍も難しい。

でも「初日の出を見る」という儀式があるだけで、十数人とはいえ、たくさんの人が普段起きていない時間に起きて、こんな寒い中で外に出て太陽を待つ。

結構ハードルの高い行動変容を引き起こしているわけです。

ここに儀式というものの力強さを感じました。

しかも大事なのは、集まっていた人たちは「自発的に」来ているということ。

嫌々来ているわけじゃなく、自分の内に何かしらの意味を見出して、自分から行動を起こしている。

だから儀式というフォーマットに特定の行動を紐づけることができれば、自分が望む行動を相手も喜んでやってくれる状態を作れるんです。

これはすごい可能性を秘めていると思いました。

儀式の面白い2つのポイント

さらに面白いポイントが2つあります。

1つは儀式の意味は何でもいいということ。

もう1つは儀式は新しく作り出せるということです。

1つ目について。

初日の出を見に来ていた人たちのうち、その由来を知っている人はほとんどいないと思います。

僕も知らなかったんですが、調べてみると、元旦の日の出には「年神様」と呼ばれる一年の幸福を司る神様がいて、初日の出を拝むのはその年神様にご挨拶をする意味があるそうです。

でも、そんな由来を知らなくても、人は自分なりに意味づけをして行動している。

儀式の意味は固定されたものである必要もないし、権威性のあるものでなくてもいいんです。

2つ目の「儀式は新しく作れる」というポイント。

これは現代のビジネスにおいてすでに活用されている例が結構あります。

ディズニーのカチューシャは「現代の儀式」かもしれない

たとえば神社に行ったらおみくじを引く、お賽銭をする。

これは「神社に行く」という行動が、おみくじやお賽銭という行動のトリガーになっていて、儀式としてフォーマット化されているとも捉えられます。

もっと身近な例でいうと、ディズニーランドに行ったらカチューシャを買いたくなりますよね。

ディズニーのカチューシャはめちゃくちゃ可愛いし僕も大好きなんですけど、正直普段使いは難しいし、パーク内でしか使わない可能性が高い。

でもディズニーに行くという行動をしたら、カチューシャを買いたくなってしまうんですよ。

ディズニー側としてはグッズの売上が立つ方が嬉しいわけで、来場者にその行動をしてほしい。

そして来場者側も、自発的に喜んでカチューシャを買っている。

意図してデザインしたのかはわかりませんが──おそらくはしたんでしょうけど──こういう儀式のデザインは現代においても全然できるし、かなり有効性が高いものなんじゃないかと思っています。


まとめ

  • 「初日の出を見る」という儀式は、普段は絶対にとらないような行動(極寒の早朝に外出)を自発的に引き起こす力がある
  • 儀式の意味は参加者それぞれの解釈で成立するし、新たにデザインすることもできる
  • ディズニーのカチューシャのように、現代のビジネスでも「儀式のデザイン」は行動変容の強力な手法として活用されている

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